第5章 N×A【ずっと、君だけに】
やめられたのに。
だけど、…できなかった。
アイツのあんな可哀想な顔、
見たくなかったから。
冗談交じりに、
「別れよ?」
って、言ったことがあった。
そのとき、すげえ辛そうで、
泣きそうで。
「…うん。」
って、か細い声が聞こえて。
大きな瞳がゆらゆら揺れてて。
「嘘だから。
本気にすんなよ。」
って、慌ててたのを
いまでもよく覚えてる。
「ニノ、」
って、柔らかく優しく、
いつも笑いかけてくれる。
「…おはよ。」
「ふふ、おはよう。
なにしてるの?」
「ゲーム。」
「見せて?」
「…んー。」
俺がそう言うと、
ちょっとびっくりしたような顔。
「え、いいの?
いつも邪魔とか言うくせに。」
「別に。」
…そんなこと言ってたっけ。
邪魔じゃなかった。
むしろ、隣にいてくれるのが
安心してたし幸せだった。
なんつーか…そっちの方が満足してた。
「…うわ、ニノ強ぇ」
「当ったり前だろ。」
面白そうだから買おっかなーなんて、
冗談なんだろうけど、言ってる。
「…買ったら、攻略方法教えてやるよ。」
「マジー?じゃあ買おっかなぁ」
なんて、俺の欲しい言葉を全部言ってくれる。