第5章 N×A【ずっと、君だけに】
別れるとか、別れないとか
アイツはよく言う。
気持ちなんて必要ない。
男としての欲を出せばそれでいい。
俺は、それで満足してる。
さっきまで騒がしかった分、
静かに感じる。
アイツがいないと、
やっぱり寂しい。
素直じゃない俺は、
そんなこと言えない。
モヤモヤする気持ちを押さえて、
煙草をふかした。
白い煙が部屋に充満する。
一本目は、すぐにもみ消す。
二本目はゆっくりと楽しむ。
煙草なんて、もう慣れてしまった。
「…ふぅ」
アイツがいないと、
むしゃくしゃしてきて、
ゲームなんてどうでもよくなった。
セーブして電源切って、
ソファーに倒れ込んだ。
さっきの情緒があってか、
眠気はすぐにやってきた。
「…ん。」
携帯の鳴り響く音で、
目が覚めた。
ソファーで寝たからから
体のあちこちが痛い。
画面を見ると、やっぱり
アイツの名前が映し出されていた。
一件のメール。
『また来週も、行っていい?』
…毎週毎週、こんなメールが届く。
大体、四時五時くらい。
『勝手にすれば』
こんな素っ気ない返事を
いつもいつも返す。
すぐに既読になって、
返信が返ってくる。
『じゃあ、また行くね。』
と、同時に送られてきたスタンプ。
『いつでも来いよ』
言葉にならない想いが、
いくつにも積み重なる。
もう、セフレなんてやめようぜ。
俺、疲れちゃったよ。