第1章 A×S【不規則な】session 1
「まーくんまーくん」
…そう言って、俺を呼んでいたのは
もう遥か昔。
俺に引っ付いてたんだ。
「おとなになったらまーくんとけっこんするのー」
近所の人たちにそう言って
俺から離れない翔ちゃん。
俺だって、翔ちゃんだって
お互いのことを愛していた。
…だけど。
それはもう過去形。
小学三年のとき、
仲良すぎてキモいって言われた。
それから距離を置くようになって
気付けば、また隣にいた。
「雅紀と話してるの楽しいからさ」
中学に入ったら翔ちゃんは誰よりも人気で。
俺はその輪に入ることができなかった。
…いや、入れた。
入ろうとしなかった。
俺の感情はおかしいし
こんなの引かれる。
だから、想いはしまっておいた。
やっとの思いで伝えたのに
翔ちゃんには届かなくて。
別々の道を歩んで。
返信も返ってこない。
忙しいのかな。
…お風呂、入ってこよう。
お風呂から上がってきたら
メールが届いてるよね…。
そんな、少しの期待。