第1章 A×S【不規則な】session 1
受験勉強がピークになってて
誰もがピリピリしていた。
もちろん、翔ちゃんも。
口を開けばいつも喧嘩して
お互いの家に行っても勉強ばっかり。
だけど、そんなことができるのは
翔ちゃんだけで。
喧嘩してても勉強してても
大切なのに、変わりはなくて。
卒業式、勇気を出して告白したのに
俺の声は翔ちゃんに届かなかった。
掻き消されてしまった。
…あ、俺の初恋終わった。
そう思った。
ずっと追い掛け続けていたのに。
こちらに見向きもしない翔ちゃん。
「…馬鹿。」
そう呟いてみたけど、
やっぱり、掻き消されてしまった。
こんな大勢の中で翔ちゃんを
探す気にもなれなくて。
…違う。
見つけ出す自信がなかった。
あの日の俺をぶん殴りたい。
終わるのは早すぎたんだ。
許せるのなら、
もう一回…。
また、翔ちゃんの笑顔を独り占めしたいんだ。
遊びに誘ってもなかなか返信来ない。
…彼女でも作ったのかな。
翔ちゃんならモテモテだろうな。
サッカー部で成績優秀で文武両道。
いつでもみんなの中心にいる翔ちゃんは
誰よりも輝いていた。