第1章 A×S【不規則な】session 1
「…よかったですね。」
「「うぉっ!?」」
振り返ると和也くんがいた。
ちょっと不機嫌そう…?
「和也、そんな顔しないの。」
「ふんっ…相葉さんも翔も
気付くの遅いんだよ。
翔なんて自分の気持ちに
気付くの遅すぎ。
俺が騙さなかったら、
気付かなかったんじゃない?」
…え?
騙すって、和也くん、
翔ちゃんになにしたの?
「ちょ、和也!」
「だって、翔、俺にコクられて
キスされるまで、自分の気持ちに
全く気付いてなかったじゃん?」
「え、ちょっと待って!
翔ちゃんと和也くん、
キスしたの!?」
俺が状況整理してたら
和也くんがふっと微笑んだ。
でも、どこか寂しそうで。
「二人とも、お幸せに。
んじゃ、邪魔者は退散しますかね。
お邪魔しましたー。」
そう言ってを翔ちゃんちを
出ていった和也くん。
「あーあ、失恋しちゃった…。」
和也くんの気持ちに
俺たちは全然気付いてなかった。
和也くんの声も
聞こえなかったフリをした。
ごめんね。
…あ、二人っきり、だよね?
「あ、と…家、上がる?」
「いいの?」
「うん。雅紀がいいなら…。」
二人っきり…。
翔ちゃんが早くしなよって
照れたように言う。
急かさなくても…
時間はたくさんある。
って言っても、あと二時間で
門限の時間なんだけどね。
「…雅紀、ありがとう。」
「なにが?」
「告白、嬉しかった。
雅紀がしてくれなかったら
自分の気持ちに気付かなかった。」
…そう、なんだ…。
って、え!?
「え、でも、和也くんがキスされるまで、
気付かなかったって言ってなかった!?
てか、キスしたの!?」
「あー、それは、ね?
ちょっとした事故。」
「やだっ!
俺も翔ちゃんとキスする!」
俺は翔ちゃんの肩を掴み、
触れるだけのキスをした。
唇が離れると、
翔ちゃんが笑い始めた。
「ふはっ、雅紀、震えすぎ。」
「なっ、仕方ないじゃん!」
俺がムキになって言い返すと
翔ちゃんは柔らかく笑う。
「雅紀って、ファーストキス
だったっけ?」
「…いや、んーっと。
初めてじゃ、ない、かな。」
「えっ!?俺初めてだよ!?」
…翔ちゃん、
覚えてないのかな?