第1章 A×S【不規則な】session 1
櫻井side
「翔ちゃあああんっ!」
「うっせ!」
今日が楽しみでいつもより
早く起きてしまった、なんて
恥ずかしくて口が裂けても言えない。
ひさしぶりに会った雅紀は
俺より背が高くて。
あんなに小さかったのに、
いつの間にか越されてしまった。
「翔ちゃんちっちゃいね。」
「うっせーよ。」
「えへ♪」
俺を見下ろすその目と
視線が重なったとき、
なんとも言えない気持ちになった。
…雅紀は今でも俺のことが
好きなんだろうか?
それとも、彼女作った?
…なんでこんなに
モヤモヤするのかな。
「…翔ちゃん?
楽しくない?」
「え、あ、いや…
そんなことない。」
「はぐれちゃうと
あれだから…。
手、繋ご?」
雅紀はなんの躊躇いもなく、
俺の手を握る。
男らしいその手に
どきっとしてしまった。
…会わない間に、
こんなにも成長した雅紀。
俺は全く成長してないのに。
なんだか置いていかれた
気分になる。
「翔ちゃん、
恋人とかいるの?」
「は?」
口に含んでいた
コーヒーを
吹き出しそうになった。
なんで今そういう話を
するんだよっ!
「いや、いないけど…。」
「っ、ほんとっ!?」
雅紀は嬉しそうに
笑っていた。
…あ、やっぱり雅紀は
まだ、俺のこと…。
「俺もいないよっ♪」
「ふーん。」
…なんでだろう。
なんか、ほっとした。
雅紀に恋人がいないことを聞いて
なんでこんなにもほっとしてるのか、
自分ではわからない。
こんな感情、
知らなくてもいいんだ。