第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
どんちゃん騒がしい祭りの人混みの中を、南と並んで歩く。
どこを見て回っても、オレには全部初体験のものばかりで。
ラムネを頭から被ったって、たこ焼きで舌を火傷したって、兎のお面だって仕方なく付けてやったりもして。
それでも始終オレの胸は弾んでいた。
(お化け屋敷は流石に胸なんて弾まなかったけど)
…ま、オレだってまだ遊び盛りの年頃ですし。
フツーに楽しいかも、こういう遊びって。
「それ気に入ったさ?」
「え?…う、ん」
射的で取ってやった試験管セットの入った袋を揺らしながら歩く南は、にこにこ笑顔。
そういうところ、仕事中毒な科学班らしいけど…例えそれが女らしい可愛い小物や縫いぐるみじゃなく、色気皆無な試験管だって。
取ってやった時の心底嬉しそうな顔で礼を言う南は、充分オレの胸にきゅんときた。
思わず頬が緩んで笑いかければ、少しだけ恥ずかしそうに頷いてくる。
「ありがと、ね」
「どー致しまして」
ちらりと見上げてくる南の目とオレの目が重なる。
にぱっといつもの笑顔を見せれば、南も頬を緩めて応えてくれた。
その時、どんっと南の背中に人が当たる。
「わっ」
「っと。大丈夫さ?」
「う、うん…ありがと」
ふらりと傾く南の体を、咄嗟に真正面から支える。
危ねぇな。
気を付けろよって声をかけようとして、周りを見渡せば。
「なんか人混み増してきたな…」
明らかにさっきより周りの人口密度が上がっているのに気付いた。
なんかすげー賑わってる。
ってか賑わい過ぎだろ。
これ以上人が密集したら、身動き取れなくなりそうなんだけど。