第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「あ…もしかしたら、あれじゃないかな。打ち上げ花火」
「花火?」
「うん。夏祭りのメインイベントみたいなものだよ。だからこんなに人が…わ、と、」
「…南、こっち」
更に増していく人混みに、押される南の体。
庇うように抱き寄せて、潰されないよう腕の中に囲う。
人混みに押されてぴったりとくっ付いた南との距離はゼロ。
夏の暑さの所為か、体の熱が伝わってくるようで…ついでに変な熱も体に宿しそうで。
「あ…ありがと」
「…ん」
鼓動が少し、速くなる。
「花火か…」
その鼓動から意識を逸らすように、改めて周りを見渡す。
すると確かに人混みの人々は、こぞって空を見上げていた。
南の予想は当たってるかもしんねぇな。
「折角だし、見ていこうよ」
「けどこの人混みの中はキツイさ」
腕の中から遠慮がちに見上げてくる南に、視線を変える。
こんなぎゅうぎゅうに押される場所に、いつまでも南を置いとく訳にはいかねぇし。
どっか邪魔されず見物できる場所とか、ねぇかな…。
「でも今から場所取りは難しいかも…」
同じことを考えてたのか、辺りを見渡す南が小さな声でぼやく。
確かに、周りの木々に邪魔されず空が開けてる場所はどこも人がいて場所取りをしていた。
…どうすっかなぁ…。
「んー…」
辺りをぐるりと見渡して。
「お」
あ。
良いもんみっけ。