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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)



「ふわ~…熱気がすげぇ…」

「人口密度高いから、尚更ね…」


 いざ南と祭りの中に踏み込めば、むわっと茹だる暑さは増した。


「この恰好、あんまり効果ないかも…暑い」

「そうなん?」

「寧ろ袖とか暑い…」


 一見涼しそうな恰好にも見えるけど、そう機能的な効果はないらしい。
 小さく呻るように呟きながら、暑そうにぱたぱたと襟元を掴んで仰ぐ──…ってちょい待ち。


「こら。それしちゃ駄目だって言っただろ」


 慌てて細い手首を掴んで止めさせる。
 以前も買い出しに出掛けた時に、ぱたぱたと遠慮なく襟元を引っ張ってたから慌てて止めさせた。

 見えるから。
 服の隙間から見えるから、下手したらアレが。
 女性の胸元包んでるアレが!

 というかユカタなんてもっと危ねぇからマジで駄目それ。


「だって暑い…」

「わかったわかった、なんか涼しめるもん食べに行こう」


 本当に暑いんだろう、気怠げに呟く南の手首を握ったまま苦笑混じりに歩き出す。
 日本人てのは背が低い人多いんさな。
 オレの身長だと一つ頭が抜きん出るから、遠くの露店でも見渡すことができた。


「あ、じゃあ私あれがいいな。ラムネ」

「ラムネ?」

「うん。夏祭りといえばあれでしょ。ラムネ飲みたい」


 あ、ラムネってのは飲み物なんか。

 暑そうにはしているけど、南もこの祭りの雰囲気に呑まれて楽しんでいるらしい。
 そんな姿を見ていると、自然とオレの顔も綻んだ。


「うし、じゃあラムネな」

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