第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「どうしたの?」
「や…さっき此処で、女の子と話してたんだけど…」
「女の子?…どこにもいないけど」
「…どっか行っちまったんかな…」
親の所にでも帰ったのか。
…だといいけど。
「ん、行くか」
「いいの?」
「ああ、時間は少ししかねぇし。今は南だけ見ていたいから」
あの子には悪いけど、オレの誕生日は今しかねぇんさ。
だからそれは譲れない。
本音だったから特に気にせずそう言えば、口を閉ざした南は視線をそろりと外した。
頬は少しだけ赤い。
…だからそういう仕草すんなって。
ブックマンとしての立場がある以上、誰かと踏み込んだ関係になんてなれない。
そう思って生きてきたから、今まで女性関係なんて軽いもんでしか見てこなかった。
軽い気持ちで誰かに好意を抱いて、割り切った軽い関係なら平気だろうと体を重ねたこともある。
だからこんなに誰かを好きになって、こんなに大切にしたいと思ったことはない。
……オレ、あんましこっち方面で理性と戦ったことねぇんだよな……我慢できるかな。
これってオレへのプレゼントと同時に、ある意味試練なのかもしれない。