第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「あ、わかった?」
流石だね、と隣で笑う南に確信する。
やっぱり此処は"日本"なんだと。
……でもなんで日本?
「此処に来た理由ってなんなんさ?」
南の国を見せたかったとか?
なんとなくそんな答えが返ってくるだろうと予想していた。
元旦の日に日本に興味があると、南と話したりしたし。
「うん、とね…ちょっと待って」
すると南は自分の腕時計を確かめて、オレの前に片手を翳す。待てと制すように。
…なんなんさ?
黙って見守れば、秒針でも数えているのか。
うんうんと小さく頷く顔。
やがてその頷きが一つ、大きなものに変わると。
「ラビ、」
くたくたの白衣のポケットから取り出したのは、一つのクラッカー。
「お誕生日おめでとー」
パンッ
そんな呆気ない音を立てて、弾かれるクラッカー。
中から飛び出した薄い色とりどりのリボンが、ぱっと散ってふらふらとオレの頭に落ちて引っ掛かる。
微かに鼻に突く火薬の臭い。
………は?
「……誕生日?」
唖然。
その言葉が一番しっくりくる反応だった。
だってオレの誕生日はまだ明日で、今日じゃない。
今の時間帯だって──
あ。
「本部があるイギリスと此処日本とじゃ、時差があるから。日本だと先なんだよ、日付が変わるの」
そういや…そうだ。
イギリスと日本じゃ、半日くらい時差があったはず。
だから教団じゃまだ夕日が浮かんでたのに、此処じゃもう真っ暗なのか。