第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
「はっ…はぁ…ッごめ、…っ」
息を切らしてまで南が足を休めることなく走り着いた場所。
其処は普段は人影のない、あまり使われることのない教団の第三広場だった。
ただいつもは誰もいない広場に、ぽつんと一人待っている影が。
「いいえ、大丈夫ですが…息切らして、何かあったんですか?」
「………なんでアレン?」
其処にいたのはアレンだった。
お互いの会話からして、待ち合わせてたんだろう。
思わず二人を交互に見てツッコむ。
約束って、アレンとだったんか。
でもなんでアレン?
「ちょっとね、ちょっと…仕事立て込んでて…」
あ、寝落ちたって言うの恥ずかしいんさな。
空笑いしながら曖昧に応える南の気持ちはわかったから、敢えて黙ってやることにした。
「それよりごめんねアレン。こんなこと頼んで…」
「いえ。美味しいみたらしのお礼です」
みたらし?
…そういや数日前にすんごい美味そうに食ってたな、みたらし団子。
オレの頭の隅に埋まってたそんなアレンの記憶が思い出されて、なんとなく合致した。
もしかしてあれ、南から貰ったみたらしだったんかな。
「でも帰りは時間に遅れないよう、気を付けて下さいね。ずっと繋げておくことはできませんから」
「うん、そこは絶対守るから。大丈夫」
「あのー…待ってクダサイ。オレ全然話読めてねぇんだけど」
自然に状況理解してる二人の会話に、はい。と挙手して参加申し込み。
オレ一人置いてけぼりなんだけど。
全く状況掴めてません。
「時間がないから、説明は後でね」
「リンクに見つかったらパアですから。ラビの為ってところが少しアレですけど…まぁ今回は内容が内容だし。譲歩します」
なんさオレの為ってところがアレって。
アレって何。
その嫌そうな顔やめてくれる? アレンさん。
ってそういやいつもアレンの傍にべったりな、ホクロ二つの監査官の姿がない。
あいつに見つかったら駄目なことって、一体なんなんさ。