第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
顔が変に赤くならないように気を引き締めながら、外見は冷静を装って声をかける。
「おはよーさん」
「おはよ……う?」
お。最後ぎょっとした響きになった。
「え…っあれ、此処っ?」
「おー、状況理解した?」
がばりと体を起こして、オレに背負われたままの南があたふたと辺りを見渡す。
「まさか…っ寝落ちてたの…!?」
「そのとーり。午後空けとけって言うから迎えに行けば、ぐーぐー寝てんだもんなぁ。リーバーはんちょ、呆れた顔してたさ」
「う、嘘…!」
途端にさぁっと顔を青くする南に、流石に言い過ぎたかとちょっぴり後悔。
リーバーのこと、上司として尊敬してるのは知ってるし。
そんな相手に呆れられたって思えば慌てもするさな。
「ま、でもゆっくり寝ろって体気遣ってたさ。あと休み取るならもっと早めに言えってさ」
「ぅ…すみません班長…」
フォローのつもりで後付けすれば、オレの背中でしなしなと反省するように小さくなる体。
それも束の間。
「あっ!」
再びガバリと体を起こす。
忙しねーな。
「ラビ、下ろして…ッ今何時…っ」
「時間?」
あたふたと背中で暴れる南に、仕方なしに下ろしてやる。
腕時計を確かめた南はまたもや「あっ!」と声を上げると、徐にオレの腕を掴んだ。
なんさ?
「約束の時間過ぎてる…! ラビごめん急いで!」
「はっ? 約束?」
ってなんさ。
誰と?
午後の用事ってオレ一人だけじゃねぇの?
色々気になったけど、慌てた様子でオレの腕を引っ張りながら走る南はそれどころじゃないらしい。
「なんさ一体、どこ行くんさ…っ?」
「後で説明するから!」
結局問いへの答えは返ってくることなく、引かれるままに後をついて走る羽目になった。