第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)
✣
「はぁ…」
つい溜息が零れる。
リーバーはんちょにも許可を得たし、寝ている南を自室までオレが運ぶことになったけど…
「熟睡し過ぎだろ…どんだけ徹夜したんさ…」
オレの背中で全体重を遠慮なくかけてくる存在は、一向に目覚める気配がない。
こうして背負って歩いてるってのに。
マジでどんだけ仕事根詰めてたんさ。
「…だから無理すんなって…言ってんのに…」
やっぱくっそ忙しい職場は変わらずくっそ忙しかったらしい。
半日休暇取る為にここまで徹夜するなんてさ。
…それがオレとの用事の為ってのは、正直嬉しいけど……でも、オレの所為で南に無理させたくないのも本音な訳で。
いくら内勤だからって、エクソシストやファインダーと比べて危険の少ない仕事だからって。南達はその職に甘んじて仕事してる訳じゃない。
その職でしかできないことを必死にこなして、オレ達をサポートしてくれてる。
それこそ、命を削りながら。
「……」
大袈裟じゃなくて、これは本音だ。
ジョニーみたいにぶっ倒れるまで仕事して、点滴打ちに行ったりする奴もザラだし。
こーいうのアレだよな、一歩間違えたらブラック会社って言われても可笑しくねぇさ。
給料にもならない残業と徹夜尽くし。
"やりがい"がなきゃ続かねぇ仕事。
「…ほんと、感心するって言うか…」
エクソシストとしてAKUMAやノアと戦うことに誇りを持っていないオレからすれば、すげぇことだと思う。
ブックマンとして記録を取る為だけに、此処にいるオレからすれば。
そういう南の真っ直ぐなとこ、嫌いじゃねぇけど…寧ろ好きだけど。
でも時々不安になる。無理し過ぎねぇかなって。
「…ん…」
不意に背中の気配が動いた。
もそりと動く、肩に乗っている顔。
足を止めて顔だけ背中へと向ける。
「起きたさ?」
「…ふぁ……ラビ…?」
薄らと開く瞼。
寝惚け眼で見てくる顔がすぐ近くにあって、とろんとした目でオレを映し出す。
…心臓に悪いさ、その顔と距離。