第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「はーぁ、なんで男と女ってこうも違うのかなぁ…あの、なんとも形容し難いふわふわ感と言うか、守りたくなる感と言うか。やっぱり可愛いは正義だ」
大きなクッションを抱きかかえながら、ちびちびとワインを口に含む。
そうしてぼやく雪の発言は、どう見ても男のそれにしか思えない。
男性ホルモンとやらは潜在的な意識まで変えてしまうのではないかと、神田は一人眉を潜めた。
「お前、男になったら馬鹿兎みたいになったな」
「まさか。あんなチャラ男になる気はありません」
「じゃあモヤシみたくなるってか」
「まさか。あんな紳士にエスコートなんてできません」
「じゃあどういう目でリナ達を見てんだよ」
「うーん…アイドル的な?こう、拝めるだけであり難いと言うか」
「…じゃあそこに欲情はねぇんだな」
「欲情?あはは、ないない。そんな疚しい目で見たらコムイ室長に殺される」
けらけらと笑う雪は嘘を付いているようには見えない。
内心安堵しながら、神田はワイングラスを口元に傾けた。
慣れない酒の味は多少なりとも脳を侵食していく。
「じゃあなんに対してなら欲が出るんだ」
「なんに対して?…うーん…AV鑑賞会しても、特にこれと言ったドンピシャな女の子いなかったしなぁ…」
「おま…またそんなモン見てたのか。ファインダーの野郎共だな」
「男なら一度は通る道だって。今なら別に問題ないでしょ」
「あるに決まってんだろ阿呆」
「ユウが珍しいんだよ、AVに興味ない男子とか。最早天然記念物」
「阿呆か、興味くらいある」
「え?だってそんなもの観ないって前にも」
「俺が視てるものがなんなのかくらい、お前知ってんだろ」
骨張った長い指先が、短い雪の髪先に触れる。
そうして同じに肌を伝った手は、同じに男物である雪の手を上から握り締めた。
「そこに男も女も関係あるかよ」