第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
(あ、れ?ドキドキする)
普段はひんやりと冷たい神田の手が、酒の所為か仄かに熱く感じる。
どきりと胸打つ自身の心臓に疑問を感じながら、雪は首を横に振った。
「か、関係あるよ。今の私は、男だし…」
「だからなんだ。それ以前にお前は月城雪だろ」
「それは、そうだけど…でも、なんと言うか…その………私、今は体ごつごつだし」
「だからなんだよ」
「声だって低いし、胸はぺちゃんこだし。女の時とは確かに変わったよ」
「それがどうした」
「ユウは平気だって言うけど……ぃ、いざとなったら…ならない、かもしれないじゃん…」
「? 何が」
どんどんか細くなっていく声に、クッションへと埋まる顔。
手にしていたグラスを机に置くと、聞こえないとばかりに神田は顔を寄せた。
もごもごとクッションから僅かに上がる顔が神田を捉える。
アルコールで仄かに赤らむ頬を隠しながら、雪はぽそりと呟いた。
「相手は男だよ?心は良くても、体は反応しないかもしれないじゃん。……そんなの目の当たりにしたら凹む」
「……俺がお前相手に勃たないつってんのか」
「んー………ぅん…」
再びもふりとクッションに埋まる顔。
顔は見えないが、複雑な表情をしているのだろう。
ようやくそこで、雪が頑なに体を重ねようとしていなかった理由を神田は突き止めた。
男のプライドではなく、守っていたのは女としての心だ。
そうと悟れば仄かな安堵感が湧く。
それと同時に、納得もいかなかった。
「自分の体くらいわかる。不能になるなら襲ったりしねぇよ」
「…わからないよ…生理現象ってそんなものだよ…」
「俺の体はヤワじゃねぇ」
「いや、強いとか弱いとかの問題じゃなく、」
「大体なんで俺が酒煽ってんのかわかってねぇだろ」
「?……なんで?」
「何処かの誰かが拒否ばっかするから、溜まった欲を解消する為に飲んでんだろ」
「……………まじで?」
「だから一人で飲むっつったのに、お前が譲らないから」
ぽかんと目を丸くする雪の手から、あっさりとグラスを抜き取る。
邪魔なものは机の隅に追いやると、ベッドに背を預けた雪の体を易々と影で覆った。
「のこのこついて来たお前が悪い」