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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)



(…あれ?普通だ)



ほとんど食べ終えたパスタの皿を前に、雪は軽く首を傾げた。



「…?」

「なんだよ黙り込んで。それで任務がどうした」

「あ、うん。結局ただのガセネタだったみたいで、収穫はなかったんだけど…」



どこか心此処に在らずに感じていた神田の態度が、嘘のように消えていた。
相変わらず口数は少ないが、雪の話には耳も傾けるし相槌もくれる。

嵐の前の静けさは静けさのまま、無事に通り過ぎたのだろうか。
それなら良しと、胸を撫で下ろす。
気まずい雰囲気を作りたい訳ではない。
すぐに頭を切り替えて、雪は目の前の食事を楽しむことにした。










「───うーん、お腹いっぱい!ご馳走様でした、今日も美味しかったです」

「ハイお粗末さま♡また明日ねん」

「ジェリー、酒」

「あら?お酒?」

「…ユウ晩酌するの?」

「いいだろ別に。飲みたい気分なだけだ」

「ふーん……私もつき合っていい?」

「…やめとけ。前みたいにまた潰れるだろ」

「次は気を付けるよ。ユウのペースに合わせなければいいんだし。ジェリーさん、私にもお酒下さい」

「あらあらまぁまぁ。二人で晩酌?いいわね〜♪じゃあ偶にはウイスキーじゃなく、雰囲気を変えて別のお酒にしなさいな」



食堂を去り際の受付で料理長ジェリーに声を掛ければ、神田は酒を要求した。
偶に一人酒を味わう神田の姿は今では珍しいことではない。
ならばと雪が参加を求めれば、しかし彼は気乗りしない表情を見せた。
それでも引き下がらない雪に、楽しそうに笑ったのはジェリー。

傍から見れば男二人の何気ない飲みの会話だが、その目には性別の垣根などなく雪と神田の姿が映っているのだろう。
あれよあれよとジェリーのペースに呑まれるまま、否定らしい否定もできず、神田が一人で行うはずだった慣れた晩酌は全くの別物へと変わってしまった。

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