第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「よ、よぅユウ…珍しいさな、こんな所で会うなんて。何読んでたんさ?」
「別に」
「わ、私も知りたいなーなんて…っ」
「お前らには関係ねぇよ」
仁王立ち見下してきた冷徹な視線は一瞬だけ。
すぐに怯える兎二匹からそれは逸らされると、スタスタと神田は奥の本棚へと消えていった。
「?……マジか…本当にユウが上の空さ…噛み付いて来ねぇ」
「嵐の前の静けさみたいでちょっと怖いんだけどね…可笑しいでしょ?」
「あれは絶対に裏が──」
「オイ」
「「はい!?」」
消えたと思ったはずの神田が、再び本棚から顔を出す。
手にしていたはずの本は、直してきたのか手元にはない。
「お前この後空いてるなら、飯つき合え」
「え?私?」
「他に誰がいんだよ。馬鹿兎と並んで飯なんて食うか」
「デスヨネー…ほら雪」
「う、うんっ行くっ」
顔色一つ変えず書庫室を後にする神田に、いそいそとついて行く雪。
最後にラビに振り返り手を振った顔は、戸惑いもありつつ弾んでいるようにも見えた。
「…やっぱ女さなぁ…ユウの前だと」
本人は無自覚なのかもしれないが、男であろうとなかろうと雪は雪。
根本のものは誰にも覆せないものらしい。
「(しっかし、南が雪みたく男になったら、ねぇ…)…うーん…」
一人残された書庫室で、高い天井を仰ぐ。
どんな容姿となるのか想像もつかないが、南を形成している根本が何も変わらないのであれば。
「…オレも両刀いけんのかな」
ぽつりと溢した問いへの答えは如何に。