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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)












「…はぁ…」

「なーに溜息なんかついてんさ?幸せ逃げるぞー」

「………」

「なんさ?」

「…ラビはいっつも幸せそうでいいね…」

「うーわースゲー馬鹿にされた気しかしねー。その目ヤメテー」



書庫室に一人。
いつもならオフのこの時間帯は修練場で体を鍛えていることが多い雪が珍しいと、同じく書庫室で文献を漁っていたラビは軽く声を掛けた。
そこで返されたのは、重い溜息と冴えない顔。
言い回しは気になるがそんな顔の仲間を放っておくことはできないと、閉じた本を手に隣の椅子に腰掛ける。



「で、何落ち込んでんさ。どーせ大方ユウ絡みだろうけど」

「………」

「あ。まさかの図星?惚気かよ」

「まだ何も言ってないけど。ユウ絡みだったら悪いの?」

「別に悪かねーけど…なんさ、喧嘩でもしたん?」

「喧嘩…は、してないと思う…多分」

「多分って。歯切れ悪ィな」

「…この間、一方的に悪いことしちゃったなってことはあったんだよね。だから何か挽回できればと思ったんだけど…ユウが妙に素っ気なくて」

「ユウは基本素っ気ない性格さね」

「それはそうなんだけど。なんかこう…別のことに目が向いてる感じるがするというか…話し掛けても上の空な感じ」

「…ふーん…」

「? 何その顔」

「いや?そんな外見してても、雪も女だったんだなって」



見た目は頭から爪先まで立派な男。
眉目秀麗な神田と並べば、尚の事男女は反転して見える程に。
それでもそんな些細なことで頭を悩ます雪は、ラビから見れば恋に悩める一人の女性として見えた。
つい口元も緩んでしまうと言うものだ。



「…やっぱりこの見た目が駄目なのかなぁ…」

「そう思ってんなら早く戻ってやりゃいいじゃんか」

「うーん…でもこの体も楽しいんだよね…もう少し満喫したい」

「男のどこにそんな魅力があんのか、オレにはさっぱりなんだけど」

「え?色々。任務は前より楽だし、ファインダー仲間と入るお風呂は楽しいし、コムイ室長に怒られずにリナリーとデートできるし、」

「めっさ楽しんでんなオイ」



指折り数える雪の声は途切れることがない。
そんなに嬉々として日々を送る雪だからか、しっくりと馴染んだ男の姿はラビも既に見慣れてしまった。

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