第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「何よぅ、愛しのシェリーの顔を見に来ただけでしょう?どうせまた朝食抜いたんだろうし。ホラ、朝ご飯持ってきたから」
手にしていたバスケットを持ち上げるボネールの目的は、どうやらリーバーらしい。
開けたバスケットの中から漂う焼けたばかりのパンの匂い。
ふっくらと色艶良く焼けたベーグルが見えて、リーバーもそれを強く否定はできないようだった。
「わざわざジェリーの所に行ったのか?そんなことしなくても──」
「違うわ、アタシが作ったの。なんでシェリーに他の男の料理を食べさせなきゃいけないのよ。んもぅ、ど・ん・か・ん」
「…食欲が一気に失せた…」
「まぁ!大変、病気じゃないの!?お熱測らなきゃ!」
「イヤ…ウン…わかった食べるから…」
…あいつの中に自分がリーバーの眼中にないって選択肢はないらしい。
顔色悪くも渋々とバスケットを受け取るリーバーは、らしいと言うか…基本お人好しだからな。
「………」
不意に胸倉を掴んでいた目の前の気配が萎むのを感じた。
目を向ければ、複雑そうな表情でリーバーとボネールを見る椎名の姿。
他の科学班連中とは明らかに違う反応に勘付く。
こいつがリーバーを大事に思っているのは、元々アジア任務で知ってたしな。
…ただ相手は男だぞ。
「何凹んでんだよ。相手はただの女男だろうが」
「っ!?な、何言って…っ」
「あいつにリーバーが目を向けるなんてモゴッ」
「しーッ静かにッ変なこと言わないでッ」
別に変なことじゃねぇだろ。
当然のことを言ったまでなのに、なんで口塞がれなきゃなんねぇんだ。
「いい?リーバー班長には絶対に変なこと言わないでよ?言ったら解毒剤作らないからねっ」
必死な椎名の剣幕に仕方なしに頷けば、口を塞がれていた手が離れる。
つーか、
「お前が原因なんだから解毒剤作るのは当然だろ」
「それは…そうだけど」
「大体、心配する必要がどこにあんだよ。天地が引っくり返ってもあの二人がどうにかなる訳ねぇだろ。男同士で」
「っ…わからないじゃない」
「は?んな訳──」
「神田もそうでしょ?男とか女とか関係なしに、雪を恋人として見られるんだから。性別が関係ある?」
「………」
図星な指摘に、つい口が閉じる。
…確かにそうだ。