第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「もう、私の話はいいから。とにかく問題は雪でしょ。それで、何があったの?」
「……あ?」
「あ?じゃなくて。男性ホルモンがどういう作用を引き起こしてるのか、詳しく効果が知りたいから。女の時と態度変わったんでしょ?どんなふうに?」
「………」
「神田?」
言える訳がない。
いくら科学者として事情を見てる椎名にでも、雪が抱かれるのを嫌がっただなんてこと。
「チッ、いいからさっさと解毒剤を作れ」
「それは努力するけど…」
「神田!もういいだろ、南を解放しろッ」
痺れを切らした様子のリーバーに腕を掴まれて、仕方なく椎名の胸倉から手を離す。
「別に殴ったりしてねぇだろ」
「んなもん論外だ。南も仕事に戻れ」
「あ、はいっ」
リーバーに目を向けられた途端、背筋を伸ばし机に向き合う。
そんな椎名の姿に、仕事で時間がないのは強ち言い訳でもないように思えた。
科学班は教団一仕事に時間を費やしてる職場だからな…。
これじゃ解毒剤完成もいつになるか。
…んなもん待ってたら俺の欲の方が枯れ果てる。
「やぁん!待ってよシェリー!」
「だから、俺はシェリーなんて名前じゃねぇって言ってるだろっ」
「じゃあダーリン♡の方がいいかしら?」
「ヤメロ。マジで」
金魚の糞のように付いてくるボネールに、リーバーの顔も疲れ果てている。
椎名はと言えば従順に、言い付け通り書類の上で羽根ペンを走らせていた。
「…神田、」
その手が不意に止まったかと思えば、椎名の目はリーバー達じゃなく俺へと向いた。
「さっきも言ったけど、神田が雪を男女関係なく見ているように、雪だって男女関係なく神田のこと好きだと思うから。不安はあるかもしれないけど大丈夫だよ」
「…根拠なんてねぇだろ」
「ないけど、わかるよ。だってあの雪が心を開いた相手なんだから」
…雪と椎名の関係性はよく知らない。
だが職場は違っても時々つるんでいるところを見掛けていたくらいだ、浅い関係でもないんだろう。