第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「それはあれだね、男性ホルモンが影響してるんだと思う」
「どういうことだ。きっちり一から説明しやがれ」
「…ぃ、いつにも増して顔が怖いよ神田…」
科学班専用の椅子に座ったまま後退る椎名を真正面から睨み付ける。
お前が原因なんだから俺に睨まれるくらい耐えろ。
つーかさっさと説明しろ。
次の日、早朝トレーニングをしても解消しなかった苛立ちを抱えたまま科学班のラボに殴り込んだ。
実際には殴ってねぇが、苛立ち任せに開け放った際にドアノブはもぎ取ってしまった。
あれくらいで取れるなんざ脆過ぎだろ。
科学班の連中は全員青い顔をしていたが文句は言わなかったから、そのまま握力でひしゃげてしまったドアノブはリーバーに押し付けた。
後であいつが直すだろ。
「つ…つまり、薬により分泌される男性ホルモンは、精神的なところへの影響もあるってことだよ。女の時は曝せなかった上半身を、男になると平気で曝せるようになった。そういうところとか、ね」
「それが女としての自覚を取り上げてるってことか」
「うーん…雪は元から女に拘りなかったようだし…だから尚更なんじゃないかな。ファインダーって仕事も、男の方が融通利きそうだし。だから未だに男のままなんだと思う」
「ならさっさと解毒剤作りやがれ」
「つ、作ってはいるんだよ…ただ仕事の合間に、となると中々時間が取れなくて、さ…」
「ァあ?あれからもう二ヶ月経ってんだぞ。周りの奴らもあいつを男扱いし始めて、女の雪なんて最初からいなかったような空気になってんだぞコラ」
「ごめんて!だからそんな怖い顔寄せ付けないで!」
思わず椎名の胸倉を掴んで凄めば、周りがガタガタと騒ぎ始めた。
「お、おい神田。それ以上は──」
「はぁーい!モン・シェリー!」
リーバーの声を遮ったのは、ドアノブのない扉を勢い良く開け放った筋肉オカマだった。
「ボンジュール♡」
ばさばさの毛虫みたいな睫毛を揺らしてぎとぎとの鱈子みたいな唇で笑う、厚顔筋肉女男。
パリでの怪盗Gの任務以来、教団にファインダーとして入団した女男だ。
確か名は…
「ボネール!?お前また来たのか!」
そうだ、ボネール。