第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「ここまで、ね。もう1時なんでしょ?」
「…仕事以外のことなら問題ねぇだろ」
「も、問題あるよ」
「何がだよ」
「だって…私、男だし」
「それのどこが問題なんだよ」
雪には体が男だろうが女だろうが問題ないと、こんな有様になった時点で伝えてある。
だから女の時と変わらず、キスだってするし体だって抱きたいと思う。
そこになんの問題があるってんだ。
「流石にこの体でユウに抱かれるのはちょっと…男のプライドが、」
「……お前男じゃねぇだろ」
「今は男です」
押し倒されたまま見上げてくる雪の顔を、まじまじと見返す。
体は男でも、心は女の時と同じだろうが。
いつからお前は男のプライドとやらを持つようになったんだよ。
「だから、ね。女に戻ったら、ちゃんとする、から」
「はぁ?今抱かせろ」
「む、無理!絶対無理!」
「なんでだよッ」
「男なのに抱かれるとか!それも女顔のユウに!屈辱!」
「あ!?女顔ってなんだコラ!」
「とにかく無理なんだって!」
「待てテメェ逃げんな!」
するりと器用に俺の下から抜け出す雪を追う前に、早々と部屋の外へと逃げられた。
「不可抗力!ごめん許して!」
ちゃっかり取り上げたファイルまで手にしやがって。
ドアが閉まる瞬間、見えたのは心底申し訳無さそうな顔で謝罪する雪だった。
ふざけているようには見えないその姿に、それ以上追えずにベッドの上で脱力する。
「…不可抗力ってなんだよ…」
俺は男でも女でも構いやしねぇのに、なんでそっちが駄目なんだよ。
つーかなんだその態度。
それじゃあ思いっきり体だけじゃなく心まで男になっちまったみたいじゃねぇか。
それもノーマルな方の。
「チッ」
行き場を失くした欲に、堪らずモヤ付く思いをベッドにぶつけた。
ぼすりと手元にあった枕を殴れば、途端に中の羽毛が盛大に舞い散る。
その有様にも顔が歪んだ。
クソ、なんだってんだ。