第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
最近、気付けば苛立つことが増えた。
理由は既に承知済みだ。
「あ。おはよう、ユウ」
「…此処は男用だぞ」
「? だから使ってたんだけど?あ、どうぞ」
「………」
朝。
朝食前に食堂のトイレに向かえば、妙にすっきりした顔で当然のように出入口から出てきた男と遭遇した。
苛立ちの大概の理由は、他ならないこいつ───月城雪。
いつも個室使ってんだろ、なら別に男用じゃなく女用でもいいだろうが。
なんでわざわざこっちに来るんだよ。
トイレだけじゃなく、風呂と言い着替えと言い基本こいつは男用を使う。
それも俺の眉間に力を入れる要因の一つだった。
そんな時に急に薬が切れて女にでも戻ったらどうすんだこいつ。
まるで危機感がない姿に朝っぱらから腹が立つ。
「なぁ雪。さっきの寝技教えてくれよ。お前に押さえ付けられたらビクともしなかったんだよなァ」
「うん、いいよ。じゃあ実践交えながらする?」
「おお、助かるわ!」
昼。
いつものように修練場で体を鍛えていれば、いつものように同じく体を鍛える雪の周りには人だかりができていた。
男になってから筋力も速度も上がった雪は、ファインダーの野郎共相手に負け無しとなった。
俺が女の時から頻繁に稽古を付けてやってたんだ、強くて当たり前だろう。
だがお陰で次第に俺と組み手をするより、ああして野郎共に稽古する時間が増えたように思う。
最近では事前に予約しねぇと、組み手の相手もできないくらいだ。
…予約ってなんだホストかよ。
それでも、それくらいなら文句なんて言いやしない。
組み手の相手なら他にもいるし、モヤシ辺りを締め上げた方がストレス解消になる。
ただ。
「ここで腕をね、こうして関節の間に入れて…」
「こう、か?」
「そう。そしたらほら、脚はもう動かせないでしょ?」
「おお!本当だ!」
…いつまで大の男にマウント取られてんだよ。
笑顔で野郎に押し倒されてんな。
つーかどこ触ってんだあの野郎、さり気なく腰掴んでんじゃねぇ体密着させてんじゃねぇ顔が近ぇ。
「オイ」
「へ?」
「ユウ?」
「お前、次は俺の相手しろ」
「へっ!?な、なんで俺!?」
とりあえず一発殴っとく。