第15章 Ⓡ◆Boy meets Boy!(神田)
「───良い買い物できたなー」
「雪、あの、ありがとう。これ…」
「ああ、うん。貸して」
お店を出て目の前の煉瓦の道を、並んでリナリーと歩く。
その手から大きな紙袋を取り上げて、自分の肩に掛けた。
質も良いし値段もお手頃だし、良いお店だったなぁ、あそこ。
「それくらい、私持てるよ?」
「ならこっち持つのがリナリーの役目ね」
そう言って、再び小さな手を握る。
柔らかくってふわふわの、可愛い手。
なんだかずっと握っていたくなる。
「…すっかり男らしさが定着したね、雪」
「? そう?」
「うん。なんだか楽しそう」
「楽しいからね」
いつものリナリーとのショッピングが、いつもとはなんだか違って感じる。
それが楽しい。
「そう言えば南さんが言ってたけど、雪に戻りたいって意思がない限り、そのままの姿なんだって?」
「あはは、凄いよね。折角だし暫くこの体を堪能させて貰おうかな」
「…いいの?」
「何が?」
「その…神田の、こと」
歩調をリナリーに合わせながら、不意に出てきた名前に目を止めた。
「神田のことは、いいの?」
「いいって、私が男であること?ユウは気にしてないよ」
「それは私も前に聞いたけど…でも、本音はもしかしたら…嫌、かも、しれないでしょ?」
「そうかなぁ。組み手は前以上に絡んでくるし、ご飯だって会える時は並んで食べてるし、寝る時もシングルは少し狭くなったけど一緒に──」
「寝てるのっ?」
「…た、偶に」
途端に目を輝かせて喰らい付いてくるリナリーに、思わず尻込みしてしまった。
そうだ、こういう話好きだったっけ、リナリー。
「でも偶に、だよ。本当に偶に。ベッドが狭いから、寝返りもまともに打てないし」
男になって伸びた身長に付いた筋肉。
小柄でもない男同士で寝るには、シングルベッドは尚狭い。
時折お互いの部屋に寝泊まりしていたけど、その回数は前より少し減った気がする。
「じ、じゃあ、キス、とかは?するの?」
「…リナリーさん…珍獣見るような目で見ないで」
「み、見てないわよっただ気になっただけで。男同士でもするのかなって」
そんなキラキラした目で言われても…何、男同士に興味あるの?