第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「教団に二人っきり…」
「そうです。皆海に行ってますからね。なんだかワクワクしませんか?」
「それは、わかるけど…でも涼めないよ?」
「そうなんですよね。そこだけが問題」
教団の大元の発電機は壊れたまま。
苦笑混じりに頷くアレンに、不意に椛は黙り込んだ。
「………」
「椛?」
照れるか驚くか納得するか。
そんな反応が返ってくるとばかり思っていたアレンに、椛の反応は予想外のものだった。
じっと考え込むように黙り込んだかと思えば、はっと顔を上げてアレンを見下ろす。
「アレンくん。私、行きたい所があるの」
「でも外を出歩くのは禁止されてますよ」
「大丈夫、教団内だから。会いたい人がいるの」
「会いたい人?」
てっきり二人きりであることを喜ぶかと思っていたのに。
更に予想外の椛の言葉に、アレンは不思議そうに首を傾げた。
「───行きたい所って…此処ですか?」
「うん」
椛に言われるがままにアレンが足を進めた先。
それは教団の地下内部だった。
巨大な扉の前で意外そうに呟くアレンも無理はない。
「此処、ヘブラスカの広間ですよ」
黒の教団の最高責任者であるコムイを守る司令塔と等しく、教団内で重要な場所。
それが此処、ヘブラスカの間である。
適合者の見つかっていないイノセンスの原石を所有し、同時に守っているエクソシストの番人であるヘブラスカ。
アレン達他のエクソシストと異なり、石箱(キューブ)という特異稀なるイノセンスの適合者である彼女は、何百年も生き、外見も人とは大きくかけ離れている。
「ヘブラスカ!」
「…椛…アレン…何故…此処に…?」
巨大な扉の奥に進めば、更に巨大な空間が広がっていた。
この広間が住まいとなっているヘブラスカは、建物5階建てはあろうかと思われる高い背に、触手のような髪束を纏う、人と蛇を融合させたかのような特殊な外見をしている。
彼女が寛げるように設計された広間だからこその広さだ。
椛を背負ったままアレンが広間の中央の空間に設置された渡り廊下を進めば、下層からゆっくりと頭を擡げ姿を見せる。
微かな白い発光体を持つ、彼女の姿だ。