第13章 ※◇◆Summer to spend with you.
「───これでいいわ」
「ありがとうございます」
「椛、痛みは?」
「ううん。もうないよ」
教団へと戻ってきたアレンは、そのまま椛を医務室に運んだ。
やはり足首の腫れは海月が原因だったらしい。
婦長の手によって処置を施された椛の足首には、しっかりと包帯が巻かれている。
「それは鎮静剤を打ったからよ。処置までにそれなりに時間が経過してるから、安心しては駄目。今日はもう安静にしていなさい」
「え、じゃあ…」
「無闇に歩き回らないこと。海に入るのは以ての外」
「ええっ」
それではアレンとビーチに戻れないではないか。
そう表情で訴える椛に、婦長は眉一つ動かさない。
「全く、エクソシストだって怪我を楽観視し過ぎなのに。此処で働く者は皆軽率過ぎるわ。駄目なものは駄目よ」
「そんなぁ…婦長さんっ」
「駄目ったら駄目」
「ぁ、あの…じゃあ僕が、椛を抱いて運べば…」
「駄目なものは駄目!甘やかさないの!」
流石に椛を不憫に思ったアレンが恐る恐る提案すれば、般若の如く形相を変えた婦長が吠えた。
「いいこと!?これはすぐに応急処置をせず怪我を甘く見た結果よ!自粛なさい!」
まるで教師と生徒の如く。
びしりと痛いところを突いてくる婦長の指摘には、椛もアレンもそれ以上逆らえなかった。
教団内で働く者の健康面については、婦長の言葉は絶対だ。
「返事は!?」
「「は、はいっ」」
「よろしい!」
何よりも彼女に逆らうと後が恐ろしい。
怪我を治療する立場でありながら、彼女の逆鱗に触れた者は血を見ることもある。
触らぬ神に祟りなし。
長いものには巻かれろ、である。