第58章 ストック
Jun side
ぐるぐると抱えてた思いを
まとまりのない状態だったけど
翔くんにぶつけるように吐き出したら
勝手じゃないと言ってくれて…
何もわからない俺でも…
今のままの俺でいいと言ってくれて…
あんなにモヤモヤしてた気持ちが
一瞬で落ち着いた
翔くんが玄関の鍵を開けてくれて家に入ると
翔「おかえり…潤」
後ろから声がかかった
退院してここに帰ってきたときからずっと…
そうやって言ってくれる
きっと…俺が記憶をなくす前までもそうしてたんだろう…
潤「ただいま」
振り返って小さく笑いかけると
翔くんも嬉しそうに笑ってくれた
昨日は俺が逃げてしまって
ゆっくりできなかったから…
今日こそは
もう少しこのまま
一緒に同じ空間にいたくて
潤「少し…飲み直さない?」
リビングに向かいながら聞くと
翔「潤の体調とかが大丈夫なら…いいよ?」
そう言ってくれたから
缶ビールを片手に並んでラグの上に座った
「「乾杯」」
軽く缶をぶつけ合って
中身を喉に流すと
気持ちが晴れたからか
さっきまでよりずっとおいしく感じた
…今までもこうやってここで一緒にお酒を飲んでたのかな…
少しでも…些細なことでも思い出したくて…
潤「ねえ…」
翔くんの方を向くと
翔「ん?」
翔くんもこっちを向いてくれた
潤「俺たちの…思い出…教えて…?」
俺を見る瞳と視線を絡めて伝えた