第58章 ストック
Sho side
普通に接したかったけど
また視線が合わなくなってしまった
お互いに口数も減って
車内ではほぼ無言…
事務所までの数十分がすごく長く感じた
いつものように俺達が一番だったけど
すぐにスタッフが来てくれて
他の三人もいつもより早く来てくれたから
俺はホッと一息ついた
和「なんかあった?」
翔「いや…うん…俺が悪いんだ…」
ニノはすぐに俺たちの様子に気づいてくれて
なるべく潤の傍に居てくれた
雅「翔ちゃんっ,差し入れの中にチーズケーキあったよ~っ…食べちゃうっ??」
翔「え?まだ早くね?打ち合わせこれからだよ?」
俺の傍には雅紀が居てくれて
なんでもない話を楽しそうに話してくれるから
一緒に…自然に笑うことができて
朝から張っていた気が少し緩んだ
雅「翔ちゃんはすごいっ…やっぱかっこいいねっ,ハイご褒美~~あ~んっ」
リオの取材の記事を読みながら
雅紀がチーズケーキを口に運んでくれた
雅「考えすぎはよくないよ,糖分接種っ,ハイ口開けるっ!!」
親鳥に餌を与えてもらうヒナの気分…?
智「ふふ…珍しい光景だけど…翔ちゃん,そのくらいのがいいよ…」
ふわっと笑った智くんが俺の横に座ってポンポンと背中を叩いてくれた
…こうやって甘えさせてくれる人たちがいるから…俺はまだ頑張れる…
そう思うことができた
翔「焦っちゃうんだよね~…どーしても…」
ボソッと呟くと
雅紀がギュッと肩を組んで
雅「自分を責めないのっ…」
言いながらまたチーズケーキを食わせてくれた
「お待たせしました…始めましょうか…」
いろんなスタッフが集まってきて
潤が立ち上がった
今までと変わらず皆の前に立って
ライブの内容を話し合いながら取り仕切る
家にいる潤よりはるかに生き生きしていて
これが本物の松本潤なんだと改めて思った
俺の傍に居ることは
潤にとって良い事なのか…
揺らいでは皆に支えてもらって
立て直した決心が
また揺らいでる
諦めたくはないけど…
俺にできることはない
ぎゅっと唇を噛み締めて
耐え忍ぶしかないんだ…
雅「翔ちゃん…噛んじゃだめだよ…」
休憩時間
こそっと耳打ちしながら
雅紀の指が俺の唇に触れた
無意識に噛む癖がついて
何度も切れていた
雅「カフェラテのも?」
雅紀の笑顔で口元がようやく緩んだ