第58章 ストック
Sho side
潤が俺をちゃんと見て
笑いかけてくれるだけで嬉しい…
潤が事故にあって
突然,当たり前だったことが
当たり前じゃなくなった
苦しいけど…
辛いけど…
こんな些細なことで喜びを感じられて
安心できる自分が居て…
込み上げてくるものを抑えるのが大変だった
潤が“普通”を意識してくれてるのがわかるから…
できるだけ俺も“普通”に…
“普通”って…なんだっけ…?
考えれば考えるほどわからなくなった
潤「翔くん…?」
翔「おわっ…」
いきなり背後から声がして
風呂上がりの潤が立っていた
潤「どうしたの?部屋の真ん中で…」
翔「あ…いや…」
夕飯を食べ終えて,2人で片づけをして…
潤が風呂に入っている間…
俺は考えすぎてリビングの真ん中に立ち尽くしていた
そんな俺を見て
笑いながら潤はソファに座った
潤「お風呂お先に…」
風呂上がりの洗いざらしの髪からポタポタと滴が落ちる
翔「潤,ちゃんと髪乾かさねーと…風邪ひくぞ…?」
ついいつものように言うと
潤「んー…翔くん乾かして?」
なんてことないようにサラッと…
とんでもないことが聞こえた
翔「え!?」
潤「え…!?」
俺が驚くと
潤も驚いた声をあげる
潤「あー…」
潤は,違ったかな…と困った顔になる
翔「…いいの…?」
潤「え…??」
翔「怖くないの…?」
俺の問いに
視線を彷徨わせて
頬を赤らめた
潤「あ…の…なんか…翔くんに髪乾かしてもらうの…好きだった…気がする…」
その姿が可愛くて…
その言葉が嬉しくて
俺は泣きそうになるのを抑えて
急いでドライヤーを取りに行った