第4章 navy blue scene1
なんでわかったかというと、以前俺も、プレッシャーで潰れそうになっているとき、一時期飲んでいたことのある薬だったからだ。
でも、こんなの飲んでも何一つ解決しなかった。
だるくなって、結局は身体を壊す。
眠りやすくはなったけど。
「雅紀…いつから?」
「……2月から」
「そんな前から!?」
「でも!…でも、最近はあんまり飲んでないよ?」
「なんでこんなの飲んでるんだよ…」
雅紀はなにも答えない。
「気持ちはわかるけどさ…」
ボソリとつぶやく。
雅紀に届くといいな。
「こんなの飲んでも、なんの解決にもならないよ…?」
雅紀は俯いてしまった。
「俺も、飲んでたよ。これ」
そういうと、雅紀はびっくりした目を俺に向けてきた。
「ほら、新しいドラマ始まって、全然ダメで。すぐに映画の撮影始まってっていう時期あったじゃん?」
そういうと、コクリと頷く。
「あの時ね、もうほんとしんどくてさ」
薬のシートをテーブルに放り出す。
「これに頼ってたんだけどさ。結局ね、ダメで。なにやってもダメで」
雅紀の目に涙が溜まってくるのがわかった。
「しかもね、寝てばっかでさ。結局逆に身体壊しちゃったんだよ。雅紀知らないだろうけど、俺、一日だけ入院したんだよ」
落ちてくる涙を拭いもせずに話を聞いている。
俺は、バスローブの裾でそれを拭ってやりながら話を続ける。
「ベッドで天井みてるうちに、ああ、俺、これじゃだめだって思って。んで、薬に頼るのやめたの」
そういえば、雅紀も肺気胸で入院中、天井をみて考え事ばっかりしてたと昔聞いたな。
「俺自身がしっかりしてかないと、俺自身のプレッシャーってさ、吹っ飛ばせないんだよね」
雅紀が頷く。
「だからさ…雅紀も」
そういうと、突然雅紀が俺に抱きついてきた。
「でも、俺、俺は!松潤みたいに強くなれない!」
振り絞るような叫びだった。
「俺は、芝居もヘタクソで、しゃべりもヘタクソで、歌もヘタクソで。一体俺、何ができるんだよ。ねえ!松潤、教えてよ!」
突然の激情に、俺は為す術もなく座り込んでいた。