第4章 navy blue scene1
その日から、俺の隣は常に雅紀の指定席になった。
どこでも隣に座るとすぐに俺にもたれ掛かって眠る。
俺は肩に手を回して、少しでも雅紀が眠りやすいようにした。
他のメンバーは最初はそれをからかってきたが、そのうちそれがあたりまえになってくると、俺の隣を空けてくれるようになった。
みんな、雅紀が疲れきっているのはわかっているので、誰もなにも言わなかった。
でも、何で俺なんだろう。
雅紀は何も言わない。
俺も何も聞かない。
聞くのが怖いから。
ある日、収録中にセットが破損した。
直すのに暫くかかるからと、前室へ通達がきて、一旦楽屋に戻るように言われた。
ちょうど、俺と雅紀は壁にもたれかかり、立ち話をしているところだった。
その話を聞いている最中、後ろから雅紀の手が俺の手をそっと掴んだ。
誰にも見られないように、身体の影になるように。
びっくりして顔をみると、雅紀はスタッフの顔を見て、何気ない表情を作っていた。
そのまま何も言えず、雅紀の手の熱を感じていた。
スタッフの話が終わり、みんなが楽屋に戻っていくのに、俺は動けずにいた。
手は指が絡まり、まるで恋人同士のように繋がれていた。
そのまま、俺は何も言えなかった。
「今日、部屋に行っていい?」
小さな声で雅紀が言った。
俺は複雑な思いで、晩飯を作っていた。
俺の部屋に入ると、雅紀はソファに座ってくつろぎ始めた。
やっぱりさっきのことは一切説明は無くて。
3月に部屋に来た日から、俺の心は雅紀に翻弄されっぱなしだった。
「ねえ、松潤。この前いってたモデル買ったよね?今日履いてたやつ、そうだよね?」
子供のような顔をして、雅紀は俺にスニーカーの話を振る。
「ああ。買ったんだよ。雅紀がこの前絶賛してたからさ。どんなものかと思って」
「ね、よくない?よくない?」
「まだ一日しか履いてねーから、よくわかんねーよ」
何気ない会話をしているが、俺の心は別のところにあって。
この前つけられたキスマークは、もう消えてしまった。
あれは一体なんだったの?
なんで俺にもたれかかってくるの?
なんで俺と手を繋いだの?
なんで俺の部屋にくるの?
俺は一体、雅紀のなんなの?
聞きたいことだけが、降り積もっていった。