第4章 navy blue scene1
抱き起こしてみると、雅紀の頬が涙で濡れているのに気づいた。
まずいものをみてしまった。
やはり相当悩んでいるんだろうか。
俺は、バスローブの裾でその涙をそっと拭った。
不意に、雅紀の目が開いた。
「あ…雅紀」
「松潤…」
お互いになんて言っていいのかわからずに黙りこんでしまう。
雅紀はちょっと今の状況がわからないようで、ちょっと俺から離れようとする。
「や、違くて。雅紀、こんな格好で寝てるから風邪引くかと思って、布団かぶせようとしただけだから」
別に後ろ暗いことは何もないのだが、言い訳するように俺は早口で喋った。
すると突然、雅紀が俺の胸に頭を預けてきた。
暫く、動けないでいた。
なんだかわからないけど、俺の胸の鼓動がどんどん早くなっていった。
……なんだ、これ?
このドキドキは一体なんなんだ?
「松潤…」
か細い声で雅紀が俺の名前を呼ぶ。
俺は返事をしたかったけど、声が出てこない。
雅紀の頭が少し動いたかと思うと、俺のバスローブの間を割って、雅紀の唇が俺の胸を触った。
温かい感触が来たと思ったら、それは鋭い痛みに変わった。
「いっ…雅紀…どうし…」
この痛みは知っている。
雅紀は俺にキスマークをつけていた。
「雅紀…」
ちゅっ…と最後の音がすると、唇は離れていった。
そのまま下を向いて、雅紀は動かない。
「どうして…」
俺もそう言ったまま喋れなくなる。
雅紀は震えていた。
表情が見えなかったので、前髪を震える指でかきわけた。
涙がこぼれおちていた。
「ごめんね。もう寝るから、一人にして?」
雅紀が震える声で言った。
その声は、あまりにも有無をいわさないもので。
俺はそのまま、雅紀の身体を離し部屋から出て行った。
雅紀からはその後も、なんであんなことしたのか説明はなかった。