第22章 オレンジscene1
期末テストも終わり、一段落ついたら、2次試験への追い込みが始まる。
そんな中、俺は有給を取って帝上の物理学部の教授を訪ねた。
生徒のことを考えたら、こんなことしている余裕なんてないんだが。
湯川教授は俺の顔を見ると、来賓室へ顎をしゃくった。
こんなことは初めてだった。
来賓室のソファーへ座ると、教授は俺に冊子を渡してきた。
「そこへ」
手短に一言言った。
「はい。わかりました」
「決心してくれて、嬉しいよ」
「…ありがとうございます」
「君は逸材だ。これからに期待する」
「逸材といえば…」
「ん?」
「今年、俺の教え子がここにくると思います」
「ほう…」
「天才とは言いませんが。可能性を秘めていると思います」
「面白い…名前は?」
「二宮といいます」
「覚えておこう」
教授はそういうと、メガネをくいっと上げて俺をじっと見た。
「アメリカで成果を上げてきて下さい」
「はい。ご期待に沿えるよう頑張ります」
「この論文はまだ世にだせませんが、向こうで完成させてください」
そういうとUSBを渡してくれた。
「やっぱり、レベル足りませんでしたか」
苦笑いした。
「時間が足りないだけです。向こうで充分それを補えるだろう」
「はい…」
「櫻井、頑張りなさい」