第22章 オレンジscene1
俺の母校の帝上大学の理工学部は神奈川の藤沢にキャンパスがある。
二宮の家からだと電車で通うのはキツイ。
多分、将来的に二宮はこの辺りに下宿することになるだろう。
ドライブしながら、藤沢の街を色々説明してやった。
二宮は将来住むであろう街を、きらきらした目で見ていた。
「…ここに先生が大学生の時、住んでたんだね…」
二宮は、目を細めて車窓を眺めていた。
「どんな大学生だったの?先生」
「んー…ノートとシャーペンばっかり持ってたな…」
「え?」
「俺は理論ばっかりやってて、実験あんまりやってなかったから…」
「そうなんだ…ドラマみたいなことしてなかったの?」
「あれは誇張しすぎ。やってる奴なんて変人ばっかりってのはあってるけど…」
苦笑いした。
「まあ、理論ばっかやってた俺も相当変人って言われたけどな…」
「なんで教師になったの?」
「……家の事情だよ…」
そこはあまり触れられたくなかった。
本当は院に進んでもっと物理をやりたかった。
でも家族には一切理解してもらえなかった。
猛反対にあって、しょうがなく教職を選んだ。
奨学金を取って、とも考えたけど、物理屋なんて金にならない。
返せるものが無いのに借金するのは気が引けた。
ノートとシャーペンさえあれば、続けられると思った。
それだけが救いだった。