第22章 オレンジscene1
スランプを脱出したころには、受け持っていた学年の卒業シーズンで、教師の職が恨めしかった。
二宮への宿題は相変わらず続いていたが、あまり理科準備室へくることもなくなっていた。
あいつも受験があるから、他の科目をやっておかないといけない。
国文の準備室で缶詰になったとも聞いた。
あいつの物理の才能を、どの教師も伸ばしてやりたいと考えていた。
だが、他の科目の点数が無いようでは大学は厳しい。
二宮の希望する俺の母校には入れない。
だから教師はみんな必死になっていた。
俺は二宮の底上げには協力できなかった。
物理のことならできたんだが…
あいつはとっくに大学入試レベルを超えていたから。
12月の深々と寒い時期。
もう人気のなくなった学校を見まわり、理科準備室へ入る。
真っ暗な中に人影があった。
「誰だ…?下校時間過ぎたぞ」
「先生…」
「二宮?」
明かりをつけると、俺のイスに二宮が座っていた。
「だって、先生こないんだもん」
「ああ、悪かったな。見回り当番だったんだ」
そう言って俺の椅子から立たせた。
舌をぺろっと出して二宮は立ちあがった。