第22章 オレンジscene1
俺は土曜と日曜に大学に通っていた。
論文を完成させるためだ。
元いた講座の教授に頼み、そのまま施設を使ってもいいと許可がでたのだ。
二宮はその話をどこからか聞いたらしく、よく聞きたがった。
あまり言いふらされたくない俺は、最初のうちはかわしていたが、そのうち熱意に負けた。
そんなに物理に興味があるなら、といろいろ話すようになった。
二宮の興味は尽きることがなかった。
俺がびっくりするようなことまで質問してきた。
時には教授の著作をめくらないと答えられないことまで聞いてきた。
乾いた大地が水を吸収するように。
二宮はどんどん伸びていった。
週に1回、二宮にだけ特別な宿題を出すようになった。
高校物理では限界があって、二宮に教えられることがなくなってきたからだ。
嬉々として二宮はそれもやってきた。
楽しくてしょうがない。
そういう感じだった。
俺はそれを微笑ましく見ていた。
だが、俺の論文が行き詰ってきた。
最初のうちはいつものスランプかと思っていたが、だいぶこじれた。
それは二宮が卒業する頃まで続いた。
ながいながい闇だった。