第22章 オレンジscene1
始業時間も近くなり、登校してくる生徒もまばらになった頃。
坂をゆっくりと歩いてくる生徒が居た。
もう走らないと間に合わない。
「おい、そこの!走れ!間に合わないぞ!」
そう叫ぶと、その生徒は慌てて走り始めた。
桜に見惚れていたらしい。
俺の姿を認めて挨拶をしようとして転んだ。
「おい!大丈夫か」
駆け寄ると、真新しい制服のズボンが少し裂けていた。
「あーあ…やっちまったなぁ…坊主」
「坊主じゃありません。二宮です‥」
ちょっとムキになって答えた。
苦笑が浮かぶ。
「何笑ってんですか…笑い事じゃないですよ…かあちゃんに怒られる…」
手のひらを擦りむいている。
俺はその手を取って傷を舐めた。
「とりあえず、HR終わったら保健室いけ。今はこれで我慢しとけ」
そう言って校門の中へ送り出した。
二宮はこちらを何度か振り返りつつ走っていった。
なんだ?
変わったやつ。
今年は担任を一回外れて、学年主任の補佐につく。
昨年までは新任からずっと担任を持っていたが。今年は教師という仕事を見つめなおす年になりそうだ。
それに密かに書いている論文も。
今年は完成させたい。