第20章 ポンパドールscene1
大野さんの泣き声だけがリビングに響いた。
誰も動けなかった。
やがて、大野さんが泣き止んだ頃にはもう夜もとっぷり暮れていた。
「…翔くん…雅紀…」
大野さんが二人を呼んだ。
二人は下げていた顔をこちらに向けた。
大野さんが俺を抱きしめていた手をほどいて、二人の方に歩き出した。
ふらふらしながら二人の前に立つと、いきなり横っ面を叩いた。
大きな音がして翔くんが吹っ飛んだ。
次に雅紀が吹っ飛んだ。
「もしニノが傷ついたら、こんなんじゃ済まないからな…」
そういうと床にへたりこんだ。
「もう、好きにしろよ…その代わり、ニノが立ち直れなかったら、嵐、解散だから…」
冷たいものが俺の背中に流れた。
「俺たちは、お前ら捨てるから…」
ぞっとした。
その背中は真剣だった。
そして、今まで聞いたこともない冷たい声だった。
翔くんも雅紀も打たれた頬を押さえたまま呆然としている。
こんなに激しく怒る大野さんを誰も見たことがなかった。
「わかった…」
翔さんが起き上がって言った。
「リーダー、俺たちそれでもいいから」
雅紀も言う。
「うん。ふたりともわかった」
大野さんが崩れ落ちた。