第1章 きみどり scene1
大野さんのマンションに着く。
「じゃあ二宮さん。よろしくお願いします」
「うん。わかった。じゃあね~。」
マネージャーは俺の顔色を伺うように覗きこんだが、目が合うとすぐに車へ乗り込んでいった。
「いじめすぎたかな…」
苦笑しながら大野さんを抱え、エントランスへ向かう。
途中マンションの住人とすれ違い、気恥ずかしい思いをしたが、嵐の二人だとわかるとエントランスのドアを開けてくれた。
キーを差し込まないと、開かないドアだったので、両手がふさがっている今は助かった。
マネージャーに教えられた部屋へ向かう。
大野さんの家に来るのが、なんとこれが初めてだ。
なんでかわからないけど、俺とは個人的に食事にも行ってくれないし、お誘いもかからない。
それはそれで別にいいのだが、やはり気持ちのいいものではない。俺以外のメンバーとは行ったことがあるのだから。
「俺だけ差別してんのは、なんでなんですかー?」
起きない大野さんへ向かってひとりごちてみる。
部屋の前に着いて、鍵を開けるのに難儀した。両手がふさがっているのだ。それに大野さんの荷物も持っている。
荷物を下ろして、大野さんも廊下に下ろそうかと思ったのだが、それは鬼なのでやめた。
片手で鍵穴を手探りで探し、なんとか解錠することに成功した。
玄関を開けて、やっと大荷物から開放される。
大野さんを床に寝かせて、鍵を後ろ手に締めて、俺は叩きにへたり込んだ。
重いんだよ…おじさん…
それでもこんなところにいつまでも寝かしておく訳にはいかないので、痛む身体に鞭打って、大野さんを抱え上げる。
ふわっといい匂いが大野さんから漂う。
そう、このおじさん凄くいい匂いがするのだ。
昔から香水に凝ってはいるのだが、香水ではないいい匂いがするのだ。これは他のメンバーも常々言っている。
一日たっても変わらないいい匂い。
何度この匂いに癒やされたことか。
実は帰りの車中でも、この匂いに癒やされてしまったことは内緒だ。
「ほんと、なんの香りなんですかー。大野さーん」
またしても目覚めない大野さんへひとりごとを言ってしまう