第2章 ワインレッドscene1
松潤が戻ってきて、車が走りだした。
「あと少しだから」
そういえば、今の松潤の家にはまだお邪魔したことがなかった。
実家にはそれこそ何回も遊びに行ったものだが、松潤が大人になってからは家に遊びに行ったのは、それこそ数えるほどで。
コイツ大人になったと悟った瞬間から、俺の中では”友達”という枠から抜けて、”仕事仲間”になった。
大人として扱うようになって、昔ほどベタベタしていない、程よい距離感で居ることができていると思う。
それはちょっと寂しくもあり、お兄さん的観点からいうと、誇らしくもあり。
「あ、ここで止めてください」
タクシーを降りると、傘を差し少し歩いた。
「ごめんね、ちょっと歩くけど」
先を進む松潤はどんどんと俺の前を行く。
どんどん、どんどん。
大きくなったもんだ。この背中。
「ここだよ」
エントランスを入って、コンシェルジュの前を通り過ぎる。
「松本様、おかえりなさいませ」
「あ、すいません。この辺りに救急やってる整形外科ってありますか?」
「おい、いいよ別に」
「いや、念の為にだよ」
行くなら、自分で調べるのに…
聞いてる間、することがなくてエントランスをぐるぐる見て回った。
なんだ、あれだな。
映画みたいなマンションだな。
俺んちなんか、ひたすらセキュリティー重視だから、やっぱりこいつとはちょっと価値観が違う。
松潤はコンシェルジュからメモを受け取り、足早に俺のところに戻ってきた。
「近所に一軒あるって。もし痛み出したら、そこ行こうね」
「おう、ありがとな」
住居に向かうドアをコンシェルジュが開けてくれる。
「もし病院に行かれる際はご連絡ください。タクシーを呼びますので」
「うん。ありがとう」
すげー。コンシェルジュってこんなことまでしてくれんだ。
「さ、部屋行こ」
エレベーターホールに行くと、エレベーターがすでに来ていた。
乗り込むとボタンを押さずに部屋の階で止まった。
便利なもんだねぇ。
コンシェルジュがいる物件て。
部屋についた。
鍵を開けて、中に入るといい香りがした。
「さ、上がって」
「おじゃまします」
「どうぞー」
「この家くんの初めてだー」
「んふ。嵐の中で翔くんが初めてだよ」
「お、まじか。嬉しいねぇ」