第1章 きみどり scene1
俺が感謝しなきゃいけない立場なのに。
「お、俺のほうこそ。ありがとう」
「ふふ…かず。”俺”って言うね」
「え?」
「ずっと”私”って言ってたのに。”俺”って言ってるよ?今」
何時頃からだろうか。
仕事のときは、”私”というようになって、そのまま楽屋でも”私”というようになってしまった。
そのほうが仕事に対して切り替えやすいというか。楽というか。
「”俺”って言ってるの、久しぶりに聞いた…」
ふんわりと笑った。
そんなこと、自分自身でさえ意識してなかったのに。
この人はよく見てる。
そしてよく感じてくれてる。
本当にありがたい存在。
「かず?もう泣かないで」
「泣いてないよ、もう」
どこからかまたタオルが出てきて、俺の顔を拭いた。
「はい、お終い」
「ありがと…大野さん」
あれ、なんかこのシーン、デジャブ。
ふふっと笑いがこみ上げてきた。
大野さんもそう思ったのか、一緒に笑う。
「俺、何回かずの顔拭いてるんだよなぁ」
「ごめんね。もう、大丈夫だから」
半笑いで謝るしかなかった。
「ん」
大野さんは、俺を抱き寄せながらまたキスをした。
ちゅっと濡れた音が響いた。
「続き…する?」
「えっ!?」
大野さんが大真面目な顔で聞いてくる。
「俺はいいんだけど…かずのさ。ほら。まだこんなだよ?」
意識してなかったんだけど、どうやら俺の中心はそのまんまだったらしい。
「あっ…いや、その…」
急激に恥ずかしメーターが上昇した。
真っ赤になっているのがわかって、もっと恥ずかしくなる。
「き、気にしないでっ。大野さんがいいなら、やめっ…」
言い終わらないうちに、口を塞がれた。
そうですか。拒否権はありませんか。
今度は性急にそこを掴まれる。
口の中を大野さんの舌が暴れまわって、俺の中心を大野さんの手が暴れまわっている。
もう快感の点がありすぎてわけが分からなくなる。
急激な手の動きに、俺の中心は熱が高まった。
「あっ…大野さん…もう…やっ…」
「いいよ。いっちゃいな」
突然、大野さんが消えた。
「えっ!?」
どこいったの!?と思っていると、急に俺の中心が生暖かいもので包まれた。
「あーっ…だめっ。だめだって…」