第1章 きみどり scene1
「なんだって?マネージャー」
「んー?なんかね季節外れの台風来てるから、明日の撮影ほぼほぼ中止だって」
「マジ?」
大野さんがニヤリと笑った。
「これでかず、今日と明日はぐっすり眠れるじゃーん!」
「ちょ、ちょっとまって。俺、いくらなんでも2日も泊まれないよ!」
また大野さんが笑った。
「だーめ。かず、満タンになるまで寝溜めするの!」
「俺だって着替えとかしたいしさー、帰らせてよ…」
「んーじゃあ、俺がかずんちについてく」
「ええ!?だめだって。あなた作品作らなきゃいけないんでしょ!?」
「だって…かずを眠らせないといけないし。気にすんなよ」
ああ、ほんっと本能のまま生きてる人って…
「わかったよ。じゃあ、俺んちいって着替えとかとってくる。いい?」
「今日はだめ。吐いたし。服は俺の使えばいいし。足りないものがあるなら、これから買ってくる」
これはもう大野さんの前で吐いてしまった俺のミスだから、反対しようがなかった。
「わかった。じゃあ洋服かしてね?」
「うん。いいよー」
手早くクローゼットからパジャマを出してくれる。
出してくれたはいいが…
「これ、女性用じゃないの…?」
「かあちゃんの!まだ一回も着てないから大丈夫!」
がっくりうなだれる俺をみて、大野さんは慌てた。
「あ、嫌だった?あのね、きれいなパジャマないの!俺、パジャマのまんまで絵を描くから、きったないのしかなくって。それしかないんだ」
「もうそれでいいです…おかあさんには新しいの買ってあげてよ?」
うんうん、と頷いているが、大丈夫だろうか。
「あ、じゃあ俺が買い物行ってる間にシャワーでもする?」
今度は下着をだしてきた。
相変わらずのグレーのボクサーパンツは新品だった。
女性ものだけどパジャマに、新しいTシャツとパンツ。
十分です。ありがとう。
「じゃあ、シャワー借りるね」
「あ、歯ブラシ。洗面所に置いとくね」
なんか、大野さんうきうきしてる。
「後はいるものない?」
「いまんとこは。あ、携帯の充電器借りるね」
「どうぞー。じゃあいってくるね」
玄関までふらふらと見送りにでる。