第1章 きみどり scene1
ふわっと、俺は大野さんのまぶたにキスを落とした。
「……気持ちいい」
「え?」
「かずのキス気持ちいい」
にへっと大野さんが笑った。
「き、気持ちいいとかいうなよっ」
「だあって、ほんとなんだからしょうがないじゃん!」
「そっちの趣味ないんだろ!?」
「ないよ!ないってば!」
「もう、知らないっ!」
そういうと俺は布団をかぶって寝転がった。
もうなんだろ。本能で生きてる人って、みんなこうなんだろうか…。
「かぁずぅ…ごめんてぇ…」
情けない声で大野さんが謝ってる。
「もう気持ちいいことしてって言わないからぁ…」
「ちょっ…その言い方…」
思わず振り返った。
目が合うと、二人で爆笑した。
「あ、あなた。その言い方。だめでしょ…ぶぶぶぶぶ…」
「だって他に言いようがなかったんだもん…ぐふふふふ」
ここで俺のいたずら心に火が着いた。
「わかった…じゃあ眠らせてくれるお礼に、気持ちいいことしてあげるよ」
「え?」
「まぶたにちゅーでいい?」
「え?」
大野さんの顔を引き寄せると、まぶたに再びキスを落とした。
「これで今日の分のお礼はしたよね?」
「うん……」
「もう、いいの?」
「えっ?」
「もうこれで終わりでいいの?」
「えっ!?他にあるの!?」
その発想はなかった。
「他にどんな気持いいことすればいい?」
「えっ!?なんかやらしい」
「えっ!?なんかやらしいこと考えてるの!?」
「ち、ちがう!」
真っ赤になって否定する大野さんをみて、また笑いがこみ上げてきた。
こんなに笑ったの久しぶりだ。
「あ、かず。吐いたばっかじゃん。寝てなきゃだめだよ」
大野さんが俺をそっと横にならせてくれる。
「なんかほしいもんある?おれ、これから買い出し行ってくるよ」
まだ時間はお昼すぎ。
ふいに俺の携帯が鳴り出した。
「あっ。おれのかばんどこ?」
「いま取ってくるから」
電話はマネージャーからで、明日の映画の撮影が季節外れの台風で、ほぼほぼ中止と思っていてくれということだった。
中止が決定の際は、メールで知らせるとのことだった。
なんだか力が抜けた。