第1章 きみどり scene1
「かず!」
「う、は、はい!」
「もうあんなハーブやめなさい!」
「えええええ!?」
大野さんは、俺を抱き上げお姫様だっこした。
スタスタ歩きながら、衝撃的な一言を放った。
「映画の撮影終わるまで、かずは俺のうちに住みなさい!」
ええええええ!?
何!?なんでそんな話になるの!?
「俺と一緒にいれば、眠れるでしょ?だから、俺んちに住みなさい!毎日寝られるんだから!」
もう衝撃でなんもいえない。
「もうハーブ禁止!コーヒーも禁止!俺だけにしなさい!」
あなた、自分が何言ってるかわかってます!?
「もう、我慢しなくていいから!」
何を…?俺なんにも我慢してないですけど…
「沢山寝なよ。眠っちゃいなよ」
ここで大野さんの声のトーンが落ちた。
「俺、かずが一人で頑張ってるの見てるの大好きだよ?でも、身体壊していくのは、見たくない…」
そういうと、ボロボロと涙をこぼし始めた。
「頑張ってもいい。だけど我慢するなよ…」
いつの間にかベッドまで来てた。
大野さんは俺をそっと下ろした。
すぐにふわふわのお布団を俺にかけてくれた。
「ちょっと待ってて」
言うなり、寝室から大野さんは出て行った。
あまりの出来事に、さっき吐いてしまった衝撃はどこかに行っていた。でも喉はヒリヒリと焼けつくように痛む。
なんて言った?あの人…
俺の家に住めって?
な、何を言ってるんだ!?
混乱していると、大野さんが戻ってきた。手にはマグカップ。
「これ、ホットミルク。はちみつ入ってるから。喉にもいいよ」
気遣わしげな顔で、勧めてくる。
瞳の縁には、まだ涙が残っていた。
その顔を見ていたら、色々と断れないんだろうなとぼんやりと思った。
「飲めない?」
「うん?」
「飲ませてあげる」
俺を抱き起こして背中から支えるように抱きしめると、マグカップを俺の口まで持ってきてくれる。
「ありがと…」
俺はマグカップを受け取り、少しずつそれを飲んだ。
「あのね。さっきのね。冗談じゃないよ?」
大野さんは俺の背中越しに、ぽつりぽつりと喋り始めた。
「俺でよければ、いくらでも使ってよ?俺の香りで寝れるならさ。つか、実際寝てたじゃん?二回も!」
「いや、そうだけど…でも一緒には住めないよ…」