第1章 きみどり scene1
目が覚めたら、またしても大野さんの胸で寝ていた。
大野さんはとってもぐっすりと眠っていたので、起こさないようにこっそりとベッドを抜けだした。
喉が乾いていたので、リビングを探し当て、入ってみた。
昨夜の惨状がそのまま残っていたので、申し訳なくなってサイドテーブルを片付け始めた。
一段落して部屋を眺め渡してみた。
大きな作品にとりかかっているのか、部屋の隅に大きなキャンバスが立てかけられていて、その下には紙がひいてあって、絵の具やスプレーが散乱している。
でもそれ以外は、散らかっていなくって。なんなら俺の部屋のほうが散らかっていた。
でもなんとも殺風景でちぐはぐな部屋。
紫のソファーに、籐の安楽椅子。
ガラスのテーブルに、木製のサイドテーブル。黄緑色のラグ。
なんだか大野智というひとが、そのまんま出てて笑ってしまった。
どんな顔して、松潤をこの部屋に招待したんだろ。
キッチンを探し当て、冷蔵庫をのぞかせてもらって、なんとか喉を潤すことができた。
冷たい水が胃に染みた。
とたんに、吐き気が襲った。
いかん。ここじゃだめだ。
でも、
トイレの場所がわからない…!
「かずー?どこにいんの?」
絶妙なタイミングで大野さんが起きてきた。
「ど、どうした!?」
キッチンでうずくまっている俺を見て、大野さんは駆け寄ってきた。
「ごめ、きもちわる。トイレ、どこ」
「トイレな!こっち」
大野さんに抱き上げられた。
え?
こんなにいとも簡単に俺のこと持ち上げられたっけ?
あっという間にトイレまで連れて行かれて、俺は存分に吐いた。
でも出てくるのは黄色い胃液ばかりで、喉が焼けつくように痛い。
すべて吐き出すと、大野さんが水を持ってきてまたそれを飲んで吐いた。
ひとしきり出しきると、楽になった。
「もう大丈夫?かず」
大野さんが心配そうな顔で覗き込む。
後ろでずっと背中をさすっていてくれた。
「ん。ごめんね。大丈夫」
そういうと、大野さんは濡れタオルで俺の顔を拭いてくれた。
「病院行く?」
「ううん。大丈夫。時々あることだから」
言うと、大野さんの顔が曇った。
「それって最近?眠れなくなって?」
「え?うん。そうだけど」
今度は盛大に大野さんの顔が曇った。