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【おそ松さん】マフィア松でスパダリ長兄松に溺愛されるだけ

第3章 恋された時って案外無自覚な物でして


【side おそ松】

金、名誉、権力。

それは、全て親から貰った物で、俺自身のものじゃない。

結婚した女も同じこと。

旦那の功績を、自分の功績のような顔して生活する。

俺の母さんは、そんな人じゃないから、俺が心を許すのは母さんただ一人だった。

あの時までは。



それは、高校時代の頃。

今まで、『取引相手の息子さん』として会っていた白虎組の息子、小鳥と出会った。

お互い仕事関連で会わされてるだけだし、特に会話もしてない関係。

でも、小鳥は明るく俺に声をかけた。

今まで、俺の権力目当てで寄ってくるヤツが多いから、表面上付き合っていたけど、相手はそうじゃない。

普通の友達のように、ヤツは自分の武勇伝を自慢し始める。

その武勇伝の主な内容が、妹だ。

やれ、小学校の低学年からお菓子を作ってくれた、だの。

やれ、今でも毎日作ってくれる、だの。

やれ、毎朝おかえりなさいといってきますのはぐをしてくれる、だの。

「妹が居ないお前は羨ましいだろ」と嬉しそうに自慢しながら妹ちゃんお手製のお菓子をくれた。

今までの『お友達』は、ただ俺をよいしょするだけの関係。

他にも、小鳥は俺にイタズラを仕掛けてくるし、俺もし返す事もある。

兄弟以外で、一緒に居て楽しかった事は初めてだった。


そのおかげで、寮生活の俺は、ごく自然と白虎組に出入りする事が増えた。

小鳥のブラコンぶりが発揮して、妹ちゃんとは絶対会わせてくれないから、接点はなかったけど。


でも、その日ある出来事を見てしまった。


厨房では、いつもいつも妹ちゃんがお菓子を作ってる。

そんな厨房に、いかにもガリガリの新人の若いヤツが中を覗いてた。


無駄なことしてんなーと思い、目の端でちらちらと見ていた。

「お嬢、ちょっとすいやせん。ここ3日、何も食ってなくて……。切れ端でいいんで、分けてもらえやせんか?」

断られるだろうなぁ、と俺は思っていた。

「駄目ですよ」

――あぁ、やっぱりな。

世の中、金や権力のあるヤツしか優しくはされない、そういう風にできている。

「おやつは後。今牛丼も作ってますから、ご飯食べた後にしてくださいね」

「お嬢……!!」

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