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【おそ松さん】S松はお嫌いですか?【喧嘩松】

第1章 厄介事はお断り


俺は、逃げるように自分の部屋へ駆け込んで鍵を閉めた。
そして、そっと鏡の前に立つ。

可愛い、いつか着てみたい。
そう思ってたチア服に、青い小さなリボンのついた可愛らしい男の娘用のパンツ。

――あぁ、顔が熱い。

『すっげー!! 色っぺー!!』

さっき、アイツに言われた台詞は頭のなかを駆け巡る。

『似合ってるぜ』

にかっと笑ったハチの笑顔と台詞が頭のなかを駆け巡る。

似合ってる、色っぽい、似合ってる、色っぽい。

「あぁっ、もう!!」

素直に、褒められて嬉しいって喜べる心が欲しい。
チヤホヤされ、当然だろ? と笑える度胸がほしい。
そうすれば、俺はもっともっと可愛い格好のまま過ごせるのに。

いつも、体育祭の時にチア服を着て踊ってた奴らが羨ましかった。
当然のように、女子制服を着て登校できる奴らが羨ましかった。

もっと、もっと綺麗で可愛くなりたい。
でも、男だし恥ずかしいし、堂々と着るなんて俺のキャラじゃない。

そういう思いが交差して、ずっと隠れて女装を続けてた。

――でも、もう潮時かな。
あれで学校中に性癖バレちゃったし、そろそろ女装も封印しなくちゃ……。

「――はぁ、自分が嫌になる」

もっと、素直にハチに甘えたいのに。
そうすれば、いっぱいいっぱいハチが可愛がってくれる。
毎日可愛いって言ってくれるんだろうし、俺だって頭撫でたり膝に乗せて悪ふざけとかされてみたいよ。
ハチは、他クラスの男子にばっかこういう事するけど、俺には絶対手を出さない。

――そう、俺には絶対手を出さない。
他の奴らとハチがラブホから出てくるのは、よく見かけてた。

「ハチのばーか」

封印してたのに。
ハチなんて、見た目ただのゴリラじゃん、何処がいいの?
ただの、ゴリラじゃん、あんな奴。

あんな奴。

『似合ってるぜ』

好きじゃない、あんなゴリラ、好きじゃない。
俺の趣味は、ふわふわとして柔らかな女の子だって、相場が決まってるんだ。

俺とハチは都合のいい兄弟みたいな関係。
――それで、いいのさ。
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