第2章 女王様と狂犬
「馬鹿じゃない? 見せびらかしてヤるのが趣味とか、最悪すぎ。ハチ、もっと相手選べばぁ?」
こんな売女なんかより、もっといい奴がすぐ近くに居るだろ!
俺は、蔑むようにハチ達を見ると、ハチのお気に入りは「いやぁん」とか狙いすましたように言いながら、ハチにベッタァと抱きつく。
ぶっ殺してやろうか、この雌豚!
お前、男のくせに女々しすぎ!
それなのに、ハチってば「可愛い子を怖がらせんなよー」なんて言いつつ、愛おしそうに、お気に入りのおでこにキスをした。
その瞬間、お気に入りはニタァって凄い顔で俺の方を見たわけよ。
自然と動いちゃったね。
パシャッ。
「わー、おもしろ~い。すごいかおー」
あえて棒読みになりつつ、撮れた写真を奴に見せる。
すると、そこには下衆に笑ってるお気に入りの顔。
「ギャーハハハハっ、いつこんなの撮ったんだよ!! ひっでー顔!!」
俺の周りによってきたクラスメイトが、それを見て笑ってくれる。
俺は、悪戯っ子のように笑うとハチにそれを見せつけてやった。
「――うわぁ……」
すると、ハチの奴ってば、凄いドン引きした顔でお気に入りの手を離したわけよ!!
その時の、お気に入りの顔!!
怒りで鼻を膨らませて、興奮してて、般若みたいで凄い面白い変顔!
へっ、この俺に勝とうなんざ、百年早いよ。
しかも、ハチはいつもなら「またな」って言って帰すのに、今日は無言で「しっしっ」って手で追い払ってる!
アッハー、俺大勝利?
優越感を見せびらかしつつ、ハチの真横に座れば、元お気に入りはぎりぎりと歯ぎしりして逃げてった。おー怖。
その後を、委員長が帰ってきた。
「あれ、水無月君と何かあった?」
「あぁ、そんな名前だったんだ。いやねー、ハチとアイツがここでおっ始めようとしてさぁ。委員長居ない間に大変だったんだからぁ~」
あー、ヤダヤダと態とらしくため息をツイて見せれば、ハチは肩をすくめて謝る。
委員長は、信じらんない!! って表情で水無月クンの走り去ったほうを眺めてた。
「どっちが売女だか……!!」
へーっ、アイツ、俺のことそんな風に呼んでたんだ。
サイテー。
「へっー、ハチって親友のことそんなふうに呼ぶ奴と仲よかったんだー?」
ジト目で睨めば、珍しくハチは苦笑して目を泳がせる。
――その表情に、俺は違和感を覚えた。
