第2章 女王様と狂犬
「ったく、Aクラスの奴らさっさとしろよ!!」
「ハチ、落ち着け」
あーあ、ハチって待てができないからね。
ハチはイライラとした血走った目で渡り廊下のほうを見つめてる。
これは、時間の問題かな?
――はぁ、余計な手は煩わせないほうがいい。
「委員長と俺で見てくるから、先戻ってて」
「そ、そうだよ。皆のぶん見てくるから、ね?」
委員長は、いきなり振られた事で驚きながらも賛同してくれた。
すると、ハチは大人しく「よろしく」とだけ伝えて教室へ帰っていく。
その後、クラスメイトが見えなくなったのを確認してから、委員長は足早にAクラスの中へ。
遠目から眺めてたけど、委員長は嬉しそうに顔をキラキラさせて、優しげな男子生徒の所へ向かった。
――あー、あれが彼氏か。
委員長の彼氏も、委員長が来るなりぱぁっと顔を明るくさせちゃって、まるでロミオとジュリエットの逢引を見てるみたい。
いや~、焼かせてくれるねー。
俺は、二人の邪魔をするわけにもいかないから、帰ろう。
下手にF6に絡まれると厄介だし。
俺は、遠くから委員長に手を振った。
すると、委員長じゃなくて、F6の桃色パーカーが気づいて手を振り返した。
違う違う、お前じゃない。
でも、Aクラスが戻って来そうだし、俺は足早にクラスへ帰る。
クラスへ戻れば、ハチは他クラスの男子といちゃついてた。
明らかに狙いすました長い髪に、女性用の学生服なんて着ちゃって。
「ハチ、ただいま」
「ん、おかえり」
ただいまーと挨拶すれば、いつもならお気に入りを帰して俺を横に座らせる。
でも、今日はそうじゃない。
お気に入りを膝の上に乗せたまま、ソイツを愛でるように、首筋にちゅっちゅとキスをしてた。
はー、ゴリラがやっても絵になんないから!!
別に、こんなゴリラどうなったって構わないし!!
糞ゴリラ、死ね!
「ゴリラ相手によくやるよ」
あえて、ハチから遠い場所に座る。
でも、ハチは追っかけてこない。
このっ、俺の下僕のくせに生意気!
「やっ、弥八さん……、僕、もう……」
「ん、今日はやけに積極的だなぁ?」
「だ、だってぇ……」
「おー、ここでヤるかー?」
周りからの野次が飛ぶが、お気に入りの可愛い子ちゃん本人は「嫌です~」なんて言いつつ、ヤる気満々。
ハァ? こんなトコでするなんざ、お前売女か死ね!!
